研究フィールドに重なる風景、不便さえも『知の探索』に変える古民家暮らし
文化人類学者の浅井彩さん夫妻は、調査地の風景に重なる地形に惹かれ、京都の小野郷へ移住しました。築60年の古民家暮らしは、外トイレや厳寒といった不便さがありますが、電熱コイルで湯を沸かすなどの工夫や、夏はエアコン不要の涼しさを楽しんでいます。自治会長を務めるなど地域にも深く根差し、不便ささえも「日々の積み重ね」として面白がりながら、将来の米作りを見据えた自給自足的な生活を実践しています。
小野郷の住人さん
Residents of Onogo
浅井 彩さんの インタビュー
住人さん一言紹介
文化人類学者の浅井彩さん夫妻は、調査地の風景に重なる地形に惹かれ、京都の小野郷へ移住しました。築60年の古民家暮らしは、外トイレや厳寒といった不便さがありますが、電熱コイルで湯を沸かすなどの工夫や、夏はエアコン不要の涼しさを楽しんでいます。自治会長を務めるなど地域にも深く根差し、不便ささえも「日々の積み重ね」として面白がりながら、将来の米作りを見据えた自給自足的な生活を実践しています。

「小野郷での暮らしも長くなってきたな」と感じ始めているという、浅井 彩さん。パートナーである阿部さんとともに小野郷で暮らし始めて、今年で4年目になります。「小野郷は縁もゆかりもない場所でした」と、浅井さんは少し笑いながら話します。
浅井さんは長野県のご出身。東京で暮らしたのち、最近までインドに滞在していました。2022年、大学教員も務める阿部さんが京都で働くことになったのを機に、小野郷への移住を決めます。住む場所を考えるにあたって、阿部さんには「こっちでも農業や畑仕事をしながら仕事をしたい」という思いがあったそうです。京北町も検討していましたが、決め手になったのは小野郷の地形でした。阿部さんが中国で研究調査していた「ハニ族」が暮らしているのは、山肌に棚田を作って田んぼを営む山間地域。京北町が比較的開けた里山であるのに対し、小野郷は「開けているというより、山の裾野に小さく土地を切り開いたような環境」で、その風景に「ハニ族」の住環境に通じるものを感じたのだとか。
「こんなところあったんだっていう驚きが、そのまま住む理由になっていきました」
最初は移住体験住宅に1年住んでいたお二人。その後、さらに奥にある集落で家を購入しました。購入できたのは最近のことで、それまでは借りて住んでいたのだそう。「今の家は築60年で、いわゆる古民家です。土間だった場所が昭和キッチンに改修されているなど、昔の家の雰囲気を残しつつ、ところどころに手が入っている状態でした。場所は集落の家並みからは少し離れていて、周りは田んぼだらけです」阿部さんが大学教員であり、学生を連れてきて作業をしたり、宴会をする場面も想定し「近所迷惑にならないようにっていうのもこの家を選んだ理由の一つになりました」

小野郷での暮らしについてのギャップを聞いてみたところ「古民家なので寒いです」とのこと。「移住体験住宅で住んでいた家も、今の家より住みやすかったけれど、それでも寒かったです」移住体験住宅には囲炉裏があり「毎日火をおこすことはできないけれど、事あるごとに囲炉裏に火を入れてみたり、そういうのは楽しかったですね」と思い出を語ります。今の家には囲炉裏ではなく掘りごたつがあるそうです。
現在の家の悩みは「水回り」が整っていないこと。「例えばトイレは外にあって、今もそのまま使っています。お風呂もガスを入れておらず、薪ボイラーはあるものの、空気口の鉄部分が錆びてて使えなくなりそうで、それは使わず電熱コイルを湯船に入れてお湯を沸かしているんです。我々がちょっと変なことしてるだけだと思いますが・・・」「いずれはリフォームを目指しています。今は一つずつゆっくり進めている感じです」暮らしにおける工夫が前提にあり、日々のやりくりが伝わってきます。
一方で、「夏は過ごしやすいですよ」と浅井さん。「クーラーなしで、扇風機一つだけで過ごしています。小野郷でも現代的なお家にするとクーラーは必要かもしれませんが、古民家は風が通るし、日陰で涼しいです」夏は過ごしやすいという実感は、古民家の魅力の一つとして伝わってきました。
在宅で研究や仕事を進めることも多い浅井さん。日中に時間を見つけて畑仕事や家の片付けを進めているそうです。毎日の食事は基本的に家で作り、「小野郷で暮らし始めてから、あんまり外食しなくなりました」とのこと。買い物する際は基本的に買い貯めで、職場の近くで済ませることもあれば、京北町の「サンダイコー」や「五本松食品デパート」に行くことも。
お風呂は、昼のうちに準備が必要になるため、銭湯に行くことも多いそうです。「今日は衣笠湯です」と、具体的な銭湯の名前も。移動は基本的に車で、行き先は京北か衣笠周辺が中心とのこと。職場である大学方面にすぐに出やすい立地も、暮らしの回しやすさにつながっている印象でした。

地域とのつながりは、住まいを起点に少しずつ生まれました。「体験住宅で住んでいた家が道路沿いだったので、畑仕事の帰りにお野菜を分けてくれる人がいたり、そこから会話が始まったり、お返しをすることでコミュニケーションが生まれました。その後、奥の方へ引っ越したので、同じ集落でも会う機会は減りましたが、車ですれ違うと挨拶をするような関係は残っています」
今住んでいる集落では、阿部さんが自治会長を務めているほか、浅井さんも自治会のイベントがあれば一緒に参加しています。「皆さんすごく仲間に入れてくれる感じです」
特に印象的なイベントは「小野郷運動会」。「京都市だったら区民運動会。それの小野郷版です。玉入れのような競技の他にクイズや新聞紙ちぎりなど、いろんな種目に自由に出られます。普段はここに住んでいない、住民の子どもさんたちでも参加できるので、外部からも結構人が来られます」

小野郷に移り住む人について、「田舎暮らしがしたいっていうよりは、お仕事の都合と合わせて決めている人が多い印象です。市街地に近いっていうのもあると思います」一般的な住宅と比べると、不便なこともありそうな古民家暮らしについては「なんとかしようっていう気持ちを持って、日々の積み重ねを楽しめる人に向いてると思います。
いろいろありますけど、総じて楽しいんです」小野郷での暮らしの、生活としての実感が伝わってきます。移住先でやってみたかったという畑仕事については「まだまだこれから」とのことですが、「いずれはお米もやりたいと思っていて。今はシステムが整っていないので簡単ではないですが・・・まずは野菜から形にして、お米が作れる状態を目指していくのが目標です」
ちなみに、浅井さんにとって今年が小野郷で本格的に体験する初めての冬。これまでの冬はインドに滞在しており、気温も10度前後だったのだとか。寒さと水回りの工夫が求められる小野郷での冬。これからの暮らしの中で、また新しい工夫が積み重なっていきそうです。

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